不動産投資ローンでは購入する投資用物件を担保に入れることが一般的です。
そして、通常は担保評価額の範囲内までしか融資を受けることはできません。
担保評価額と不動産の売買価格は必ずしも一致するわけではありません。
そのため、あらかじめ金融機関の評価額の計算方法を理解して「評価額はこれくらいになるだろう」と把握しておくことは不動産投資において非常に重要になります。
不動産投資ローンにおける担保評価の方法を解説していきます。
土地の評価方法
土地の評価方法は比較的簡単です。
路線価や公示地価と呼ばれる価格を使用して面積を乗じることでおおよその評価額を知ることができます。
特に一戸建てに投資するのであれば土地の評価方法についての理解は必須だと言えますし、マンション投資でも土地の評価方法について理解しておくことは非常に大切です。
土地の評価方法を詳しく解説していきます。
路線価を使用して評価するのが一般的
土地を評価する際には路線価を使用して評価するのが一般的です。
路線価とは国税庁が発表している1㎡あたりの土地の単価です。
相続税や贈与税などの税金の計算の際に使用される地価で、国税庁が発表しています。
銀行が担保評価を行う際にはこの路線価を使用して評価を行うことがあります。
基本的に土地の評価額は次の式で算定します。
路線価×面積
例えば、マンションの敷地面積400㎡の路線価が20万円/㎡のなのであれば、20万円/㎡×400㎡=8,000万円の評価額となります。
ここに、地形や立地に合わせて補正をかけて土地の評価額を決定します。
公示地価や基準地価なども使用される
路線価では近隣の地価を知ることができない場合には公示地価や基準地価を使用することもあります。
公示地価とは国が調べた都市の土地価格で、基準地価は都道府県が調べた都市部以外も含む土地の価格です。
一般的には路線価よりも公示地価や基準地価の方が高くなる傾向があります。
どの地価を参考にするにせよ、基本的には単価に面積を乗じることで土地の評価額を算出します。
建物の評価方法
建物の評価方法は積算法という方法か収益還元法といういずれかの方法を用いて計算するのが一般的です。
それぞれの計算式や評価方法について詳しく見ていきましょう。
積算法
積算法とは再調達価格(建物の建築費用や売買費用)に延床面積を乗じて、残存年数分で割引く方法です。
個人が住む一戸建ての建物を評価する際には積算法が使用されるのが一般的です。
積算法では具体的に次の計算式で評価額を求めます。
評価額=再調達価格×延べ床面積×(残存年数÷法定耐用年数)
それぞれの言葉の意味は次の通りです。
- 再調達価格:建物を新たに建て直す場合にかかる費用。木造や鉄筋などの構造ごとに再調達価格は異なる
- 延べ床面積:建物の面積を合計した面積
- 残存年数:法定耐用年数から築年数を差し引いた年数
- 法定耐用年数:建物の構造や用途に応じて財務省が定めている建物の耐用年数
再調達価格は建物ごとに次のように決まっています。
- 鉄筋コンクリート(RC):20万円/㎡
- 重量鉄骨:18万円/㎡
- 軽量鉄骨:15万円/㎡
- 木:15万円/㎡
また、建物ごと耐用年数は次の通りです。
- 鉄筋コンクリート(RC):47年
- 重量鉄骨:34年
- 木造:22年
例えば、RCの100㎡の築10年の物件の評価額は次のようになります。
再調達価格20万円×延べ床面積100㎡×(残存年数37年÷法定耐用年数47年)=15,744,680円
積算法は投資用物件だけでなく、個人の居住用建物を評価する際にも使われます。
住宅ローンの不動産担保評価は基本的には積算法で行いますので、投資だけでなく「居住用の一戸建てが欲しい」というような場合にも計算してみるとよいでしょう。
収益還元法
収益還元法とは、投資する不動産からどの程度の利益を得ることができるのか、ということから不動産の評価額を逆算する方法になります。
投資用物件専用の評価方法ですので、個人の居住用物件の評価では使いません。
計算式は次の通りです。
評価額=1年間の投資収益÷還元利回り
例えば1年間の収益が600万円、利回りが5%の物件であれば600万円÷5%=1億2,000万円の評価額となります。
収益還元法は計算方法が簡単ですので、自分で容易に評価額を算出することが可能です。
なお、還元利回りは類似の不動産の取引事例から求めるのが一般的です。
国土交通省「土地総合情報システム」の「不動産取引価格情報検索」を調べれば、類似の不動産の取引価格を調べることができます。
そして、同じようなエリアで同規模の物件から得られる収益を調べれば、『1年間の予想収入÷ 不動産価格』という計算式で還元利回りを計算することができます。
購入する物件の価格が適正かどうかを知るための目安にもなるので、収益還元法の計算方法を理解しておきましょう。
なお、収益還元法は投資物件の収益をベースに評価する方法ですので、投資用物件の評価にしか使用されません。
居住用の住宅などの不動産の評価は積算法によって行われるのが一般的だと理解しておきましょう。
評価額には掛け目を乗じるのが一般的
上記で計算した評価額には掛け目を乗じるのが一般的です。
不動産は株や債券などの有価証券のようにすぐに資金化することができるわけではなく、場合によっては想定していた価格よりも低い価格でしか売却することができないケースもあります。
このような場合に備えて、評価額に掛け目を乗じて、ある程度割り引いた状態で評価します。
掛け目は70%となるのが一般的です。
例えば、年間家賃収入600万円、還元利回り5%の物件の評価額は600万円÷5%=1億2,000万円です。
ここに70%の掛け目を乗じ、1億2,000万円×70%=8,400万円が銀行の担保評価額となります。
この場合、基本的には8,400万円までしか借りることができないものと考えた方がよいでしょう。
評価額を計算し、適正価格かどうかを検討しよう
不動産投資ローンは担保評価額の範囲内までしか融資されないのが基本です。
したがって、売価が評価額よりも低ければ自己資金がなければ当該物件を購入することができないことになります。
このような事態を防ぐために、あらかじめ自分で担保評価額を計算して、売価が評価額よりも著しく高くないかということを確認する必要があります。
万が一、計算した評価額よりも売価が高いのであれば、当該不動産は割高ということであり、買うのを控えた方がよいかもしれません。
不動産は、担保評価額を計算することで売価が適正価格かどうかを計算するのは比較的簡単です。
購入する前には自分で評価額を計算し、売価が高すぎるのであれば購入を再検討しなければなりません。
逆に売価が評価額よりも安すぎる場合には次のような問題がある可能性あります。
- 事故物件
- 入居者の家賃の支払状況が悪い
- 近くに反社会的勢力の事務所等
あまりにも安すぎる物件は、投資先として致命的な欠陥を抱えている可能性もあります。
必ず安い理由を確認してから投資を決定しましょう。
不動産投資の融資を受けるまでの流れはこちらの記事で解説しています。
まとめ
不動産投資ローンの担保評価は土地は路線価や公示地価を使用して評価します。
一方建物は積算法や収益還元法を用いて評価を行います。
不動産の評価額は自分自身でも比較的簡単に算定することができます。
評価額を求めることができれば「借入によって購入することができるか」というだけでなく、不動産の売価が適正かどうかということも知ることも可能です。
不動産担保評価額の計算方法を理解して、適切な価格で不動産投資を行いましょう。