不動産投資は、他の投資に比べるとある程度予測可能です。そのため、きちんとシミュレーションを行い、リスクを考えながらランニングコストを差し引いた実質の収益を考える必要があります。
シミュレーションを踏まえてローンに無理がないか返済計画は可能かという点を管理することが大切です。
そこで今回は不動産投資における利回りをシミュレーションするにはどうしたら良いのかを解説します。
不動産投資の利回りとは?
不動産投資をする場合、利回りについて考えることが大切です。不動産投資の利回りとは、投資額に対する年間収益の割合です。
金融商品とは少々異なる点があり、計算方法が複雑ですが、不動産投資は金融商品に比べると偶然性が低いためシミュレーションをすることが大切です。
利回りには、表面利回りと実質利回りのほか、不動産投資の情報誌などで使われる期待利回りや取引利回りがあります。
まず不動産投資を始める前に不動産を選ぶにあたって必要な表面利回りと実質利回りについて解説します。
表面利回り(想定利回り)
表面利回りは、中古マンションの情報サイトで利回り:約4.58%というように書かれています。これは簡単に物件を比較する際に便利です。
表面利回りは、1年分の予定している収入を不動産の価格で割り、100をかけた数値です。
例えば、物件の購入価格が2,500万円、家賃を12万円で貸すと年間の家賃収入が144万円の場合を計算します。
表面利回り=年間収入÷物件の価格×100
の方程式に数字を入れると
144万円÷2,500万円×100=5.76(%)
表面利回りは簡単に計算できるため、物件を比較する際に便利ですが数字をご覧になってわかるように、固定資産税や維持費など出費を考慮していません。毎月家賃収入があることを前提に計算します。
実質利回り
見てきたように表面利回りでは実際にどのくらい利回りがあるのかわからないため、実質利回りを計算します。ただし、実質利回りは未定の支出や空室状況などはっきりしない要素があるため、計算が複雑です。
年間で必要な支出、つまり管理費や修繕積立金、年間ローン返済額(元金と利子)などを
年間収入から差し引いて計算します。また物件の価格も実際に支払った金額と異なります。不動産投資ローン事務取扱手数料や登記費用などの初期費用を加算した額です。
年間の家賃収入144万円から管理費など支出を引いてた額を物件価格に初期費用を足したもので割り、100をかけます。
方程式
実質利回り=(年間収入–経費)÷(物件価格+初期費用)×100
経費は年間40万円、初期費用70万円と仮定して計算します。
(144万円 – 40万円)÷(2,500万円 + 70万円)× 100 =3.74%
以上のように経費などの支出を差し引いて計算する実質利回りは、表面利回りよりも低い数値になることがわかります。
しかし実際の利回りは上記の計算方法だけでも不十分で、空室状況やリフォームなどの費用も考えることが必要です。
またローンで購入した場合は返済金の利率などから実際の利回りは計算されます。手元に実際に残る利益がわかる実質的な利回りを計算することはかなり複雑です。
計算の問題点
表面利回りにしろ、実質利回りにしろ12カ月の間空室にならず家賃が毎月入ってくることを前提に計算しています。
つまり「満室時想定集中」です。広告に掲載されている数字も同様です。そのためこの数字だけで利回りが高い物件だと思うと失敗する可能性が高くなるので、空室状況を考慮することが必要です。
不動産投資の利回りをシミュレーションする無料アプリ4選
利回りの計算が複雑なため、不動産投資の利回りをシミュレーションするアプリが多数紹介されています。
利回りの計算は、物件購入前のみに必要なわけではありません。すでにアパートやマンションを賃貸経営している場合に、経営面の問題点をあぶり出した場合にも有効です。
不動産投資 利回りシミュレーションで収支を計算(提供元:Factory, inc.)
物件の購入金額(物件の価格と初期費用などの合計)と資金に関しての情報(自己資金、借り入れ金額、年間利息、借り入れ期間、年間返済金など)を入力すると年間収益を自動で計算します。
いくつかの計算履歴を保存しているので、物件購入の際に比較が可能です。テキストデータにエクスポートできるので、情報をフォルダに保存しておけます。収支が可視化できるため、運用状況の見直しにも便利です。
アプリは計算をするだけではなく、不動産投資に関する最新情報が届きます。また不動産に関する用語解説などもしてくれるので、初めて不動産投資をしようという人にも重宝です。
不動産利回り計算機(提供元:Google Commerce Ltd)
前項の利回りシミュレーションアプリに比べるとサイズが小さく計算のみの機能が欲しい方におすすめのアプリです。
物件の購入額や家賃総額、ローンの借入れ年数、利子などを入力すれば、利回りが簡単に計算されます。
不動産収支計算機(提供元:M & T ASSET MANAGEMENT, LIMITED LIABILITY CO.)
アップルストアでダウンロードできますが、iPhoneおよびiPad用のアプリです。物件価格、自己資金、ローンの利子、諸経費率や空室率から利回りシミュレーションが簡単にできます。
操作がシンプルで、計算結果を保存できるので購入前だけではなく運営している人にも便利です。
アパート一棟買いLite(提供元:La Feve System)
こちらもアップルストアでダウンロードできるiPhoneおよびiPad用のアプリです。名前の通りアパート一棟運営するための利回り計算だけではなく、マンション一室の利回り計算にも利用可能です。
物件価格(アパートの場合は土地と建物の合計)、想定家賃、ローンを利用する場合は融資額と融資期間、金利を入力すれば簡単に利回りのシミュレーションが可能です。
グラフ表示機能で視覚化することもできるため、数字を見ていると頭が痛くなるという方にもおすすめです。利用しているうちにさらに細かい情報(税率など)を入れていくと、正確な利回りが分かるようになります。
計算結果はPDFとしてエクスポートできるので、保存や転送が簡単です。
利回りだけで選んでは危険!
利回りの計算はとても重要ですが、利回りのみ見て物件を選ぶと空室率が高く思っていたほど利回りが良くなかったという場合があります。
簡単に計算できる表面利回りの方程式を見てもおわかりのように、物件の価格が格安の場合はそれだけ利回りは高く計算されます。
空室率を低く抑えて常に賃貸されている状態を維持するためには、魅力的な物件を選ぶことが大切です。
以下は国土交通省による住宅市場動向調査で民間賃貸住宅を選んだ理由アンケートの結果は次の通りです。
まず家賃が適切だったことはもちろんですが、「住宅の立地環境がよかった」が51.6%という結果でした。
立地環境は、職場に近い、駅に近い、日常の買い物が便利などが主な要素です。また設備は特にお風呂など水回りが新しいことがポイントです。
今住んでいる民間賃貸住宅を選んだ理由 | 割合(複数回答可) |
住宅の立地環境が良かったから | 51.6% |
価格/家賃が適切だったから | 54.0 |
マンションだったから | 4.4 |
住宅のデザイン・広さ・設備等が良かったから | 35.6 |
昔から住んでいる地域だったから | 17.0 |
親・子供などと同居・または近くに住んでいたから | 10.6 |
信頼できる不動産会社だから | 7.8 |
子育てに適した環境だったから | 5.4 |
その他 | 12.6 |
住宅市場動向調査令和元年
家賃の相場もご自身で調べることが重要です。
マンション一室を購入の場合は同じ建物で賃貸に出している物件があれば、どのくらいの家賃で貸しているか、ない場合や一棟アパート経営の場合は周辺の家賃情報を不動産情報ページで確認しましょう。
確実な情報を獲得した上でシミュレーションをすると、確実な数値が出てきます。
ただしローンを組んで不動産投資をしている人は、手元に残る現金だけではなく物件も少しずつご自分のものになっていることを思い出してください。つまり現金とは別に財産が増えていることです。
不動産投資の利回りのシミュレーションで成功する
表面利回りと実質利回りの計算方法と簡単に数値を出せるアプリを4種類選んで紹介しました。
利回り計算をきちんとすることは、優良物件を選ぶためだけではなく健全なマンション運営をするためにもとても重要です。
アプリを使えば簡単に計算ができるので、目に入った物件を計算していくうちにどのような物件が利回りが良いのかということも分かってきます。ぜひ参考にしてくださいね。