アパート経営ではさまざま経費が必要になり、なかでも重要な費用のひとつが「修繕費」です。
建物や設備の不具合を直すための費用であり、アパートを健全な状態に保って空室率を軽減させるために欠かせません。
ただ、これからアパート経営をはじめようと考えている方のなかには「どんな場所に費用がかかるのだろう?」「費用はどのくらい必要なの?」などと、不明な点も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、アパート経営における修繕費の種類や注意点などを解説します。
興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
アパート経営の修繕費とは
アパート経営において修繕費は、収益を左右する大きな支出のひとつです。
修繕費をかけて建物の質を維持すれば、空室率の改善や入居者の満足度の向上につながり、しいては安定したアパート経営を実現します。
アパート経営の修繕費には規模・内容・期間などにより、大きく分けて下記の3つがあるのでチェックしておきましょう。
大規模修繕
およそ10~15年の長いスパンでおこなう、文字通り大規模な修繕です。
一般的におおむね15年に一度が目安で、アパートの規模によって数百万円から1千万円程度の修繕費が必要になります。
屋根や外壁の塗装・葺き替えやベランダの防水処理、タイルの貼り替えなどアパートでもっとも費用がかかる部分の修繕であり、工事期間が長期になるケースもある点に留意しておきましょう。
大規模修繕は、建物の老朽化を遅らせて資産価値を維持する「予防修繕」としての側面もあります。
完全に補修が必要になる前に修繕しておけば、のちの大きなトラブルを防ぎやすいため、健全なアパート経営を継続させるうえで大規模修繕は必要不可欠なのです。
修繕予防
修繕予防とは、大きな修繕が必要な状態になる前におこなうアパートの修繕です。
予防の点では大規模修繕と同じなものの、より早めに対処する修繕を指します。
たとえば、古くなった設備機器の入れ替えや室内の模様替えなどが修繕予防です。
くわえて、シロアリ検査や外壁・屋根の状態検査なども予防修繕に含まれます。
通常、1年から数年に一度程度のスパンで実施するのが一般的です。
また、入居者の退去時などに、入居率を高めるべく部分的なリフォームを実施する場合もあります。
修繕費用は大規模修繕よりは安く、数万円から数十万円程度が目安です。
小規模修繕
小規模修繕とは、大規模修繕や修繕予防と比べて軽微な修繕です。
計画的におこなうというよりは日常的なトラブルに対応するものであり、その都度対処しなければなりません。
共用部分の簡単な修繕や退去時のクリーニングのほか、室内装の整備なども含まれるため「原状回復修繕」とも呼ばれています。
水回り設備や機械の故障などの日常的な修繕が多いものの、突発的な自然災害や事故で想定以上に大きな修繕になる場合があるため注意してください。
よって、突然の大きな出費に備え、あらかじめ余裕をもって修繕費を用意しておくのが重要です。
アパート経営でおもな修繕費
アパート経営では、さまざま工事や設備の交換・修理で修繕費が必要になります。
実際にどんな修繕が必要なのか、おもな内容をチェックしておきましょう。
外壁工事
外壁の塗り替えは、建物の外観や耐久性を維持するために必要不可欠な工事です。
10~15年に一度程度のスパンで大規模修繕としておこなわれます。
外壁の一部がひび割れたり、剥がれたりした場合には小規模修繕で対応しても問題ありません。
工事費用は建物の状態や塗料、足場の有無などによって異なり、100平米あたり50~100万円程度が目安です。
給排水管工事
給水や排水の配管は、新築から15年程度経過した頃から劣化が気になりはじめます。
嫌なニオイや詰まりが発生するほか、最悪の場合は水漏れトラブルになる場合もあり注意しなければなりません。
長期間放置して大きなトラブルにならないよう、退去時の内装リフォーム実施時に同時進行するのがおすすめです。
修繕費用は規模や老朽化によって異なり、1戸あたり15万円から40万円程度が目安になります。
給水ポンプ交換
アパートには、各部屋に給水するためのポンプを設置しています。
設置・交換から10年以上経過していると、不具合の発生する恐れがあるため注意が必要です。
交換費用は70~150万円と高額なため、5年に一度程度のスパンでオーバーホールしておくと交換時期を先延ばしできます。
防錆工事
ベランダや外階段は、見た目はもちろん安全面でも定期的なメンテナンスが必要な部分です。
とくに、素材に鉄を使用している部分は雨水によってサビが発生しやすく、10~15年に一度程度を目安に防錆工事を実施しなければなりません。
なかでも、手すりは常に雨風にさらされており、見た目以上に腐食が進んでいる場合もあり注意が必要です。
定期的なメンテナンスを怠ってしまうと、最悪の場合は落下事故など重大な事故が発生しかねないため、しっかりとチェックしておきましょう。
設備交換
アパートには、さまざまな設備機器が備えられています。
なかでも、エアコンや給湯ボイラーは7~10年ほどと寿命が短く、できるならば不具合が発生する前に交換しておくとよいでしょう。
システムキッチンやユニットバス、洗面台・トイレは入居者の使用状況によって劣化具合が異なり、交換する時期もさまざまです。
一般的に、設備機器全般において10年程度が不具合なく使用できる目安とされているので参考にしてみてください。
ただ、古い設備ばかりでは人気を得られず空室率に影響する場合もあるため、なるべく早めのスパンで交換するのがおすすめです。
内装材の貼り替え
通常、退去時の原状回復修繕として実施します。
壁紙とフローリングの交換がおもな内容であり、ワンルームでおよそ5万円前後が修繕費の目安です。
アパート経営の修繕費の注意点
アパート経営では、日常的にしっかりと修繕をおこなっていても、10~15年に一度程度のスパンで大規模修繕が必要となります。
その都度しっかりと対応できるよう、注意点やトラブルの対処法をチェックしておきましょう。
修繕計画を立てる
アパート経営では、不具合の発生時に対応する修繕のほか、定期的なメンテナンスを必要とします。
項目ごとに修繕計画を立てて備えておきましょう。
たとえば、
- システムキッチンやユニットバスなど住宅設備の入れ替え計画
- 屋根や外壁などの点検・修繕計画
- 給水ポンプの交換や給排水管の工事計画
また、大規模修繕では多額な費用が必要になるため、月々の家賃収入から修繕費を積み立てておくのも有効な対処方法です。
少額の小規模修繕なら一時的に対応できても、大きな修繕が発生した際に対応できないケースもあり得ます。
目安としては、月々の家賃収入の5%程度を積み立てておくとよいでしょう。
ただし、修繕積み立て費は月々に積み立てる時点では経費として計上できません。
あくまで、修繕を実施したときに計上しなければならないため注意が必要です。
トラブルの対処方法を知っておく
修繕費を巡ってトラブルが発生する場合もあるため、対処方法を知っておきましょう。
修繕費のトラブルの多くは、中古アパートを購入したケースや入居者の退去時に集中します。
中古アパートを購入した直後に大規模修繕が必要になる場合もあるため、契約時に建物の状況や修繕履歴などをしっかりと確認しておかなければなりません。
入居者が退去した際には、部屋の原状回復にリフォームやハウスクリーニングを実施しますが、想定外に汚れや損傷が激しい場合には責任の範囲でトラブルになるケースがあります。
未然にトラブルを防ぐためにも、入居時に原状回復修繕について説明しておくほか、退去時には必ず立ち会って現況を入居者と確認し合うことも重要です。
また、国土交通省では「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を策定していますので、契約書や重要事項説明書を作成する際の参考にしてみてください。
まとめ
修繕費はアパート経営を健全に運営していくうえで、必要不可欠な経費です。
計画的にメンテナンスをおこなう必要があるほか、突然の出費に備えて資金計画もしっかり立てておきましょう。
アパート経営をはじめ不動産投資で不明な点があれば、不動産のプロに相談するのも解決方法のひとつです。
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