近年、使用されていない空き家の増加が問題視されています。
今後も空き家は増え続けるとの予測もあり、対策として施行されたのが「空き家対策特別措置法」です。
放置されている空き家の所有者に対して勧告・命令できる法律で、従わなければ過料を科されるケースもあり注意しなければなりません。
そこで今回は、空き家対策特別措置法について詳しく解説します。
過料を科されないための対策もご説明しますので、とくに空き家を相続する予定のある方は参考にしてみてください。
空き家対策特別措置法とは
「空き家対策特別措置法」とは空き家によって景観が損なわれたり、衛生上・防犯上問題があったりする空き家に対して、行政が所有者に助言・指導・勧告・命令等の措置をおこなえる法律です。
2015年2月に施行され「空き家法」とも呼ばれています。
空き家対策特別措置法が施行される以前は、自治体が独自に空き家に対する条例を制定して対応していました。
しかしながら、敷地内に入れないなど法的効力がないため、実効性のある空き家対策として制定されたわけです。
空き家対策特別措置法の施行によって自治体職員が敷地内に立ち入ることや、所有者確認のために住民票や戸籍、固定資産台帳など個人情報の確認が可能になりました。
空き家対策特別措置法では問題のある空き家を「特別空き家」として認定し、指導・改善を促します。
特定空き家に指定される条件
一口に空き家といっても、すべてが空き家対策特別措置法の対象になるわけではなく「特定空き家」に指定された建物が指導・改善の対象になります。
倒壊する危険がある
倒壊する恐れのある危険な状態の空き家は、特定空き家に指定されるため注意が必要です。
たとえば、下記に該当すると特定空き家として判断されます。
- 建築物が倒壊する恐れのある状態
- 屋根や外壁などが脱落・飛散する恐れのある状態
- 擁壁の老朽化による危険な状態
上記のような状態になっていないかを自治体の職員がチェックします。
衛生上著しく有害な恐れがある
放置したままの空き家が衛生上著しく有害な状態であると判断されると、特定空き家に指定されます。
たとえば、下記のような状態です。
- 建物や設備などの破損が原因でアスベストが飛散したり、排水の流出で臭気が発生したりする恐れがある状態
- ゴミの放置や不法投棄によって臭気や害虫、害獣などが発生して地域住民の生活に悪影響を与えている状態
とくに、アスベストの吸引は肺がんの原因になるため、十分に注意しなければなりません。
設備においては、浄化槽を放置すると汚物の流出や臭気が発生し、害虫や害獣の発生の原因になります。
著しく景観を損なっている
適切に空き家を管理していない場合、著しく景観を損なっているとして特定空き家に指定されます。
たとえば、下記のような状態にならないよう注意しなければなりません。
- 屋根や外壁に落書きされていたり、大きく傷んでいたりした状態で放置されている
- 立木が建物を覆うほどの状態で放置されている
- 敷地内にゴミが散乱したままの状態で放置されている
上記のような状態は不法投棄を誘発するなど、さらに状況を悪化させる恐れがあり注意が必要です。
周辺環境に悪影響を及ぼす不適切な状態
周辺住民の生活環境に悪影響を及ぼしている不適切な状態と判断されると、特定空き家に指定されます。
下記のようなケースでは、不適切な状態に当てはまるため注意が必要です。
- 立木や枝が敷地をはみ出しており、歩行者の通行を妨げている
- 空き家に住み着いている動物の鳴き声などにより、周辺住民が迷惑を被っている
- 動物の毛や糞尿などが不衛生な状態なまま放置されている
- シロアリやハエなど害虫が発生したまま放置されている
- 不特定の侵入者が多く治安が悪化している
特定空き家に指定されないためには、上記のような状態にならないよう管理しなければなりません。
特定空き家に指定されるとどうなる?
では、特定空き家に指定されてしまった場合、どうなるのでしょうか。
詳しく解説していきましょう。
指導や勧告を受ける
特定空き家として指定されてしまうと、必要な措置・改善をするよう助言・指導・勧告・命令を受けます。
たとえば、立木によって周辺住民が迷惑を被っている状態であれば、木を伐採するよう対応を求められるのです。
自治体によっては独自の条例を定めている場合もあり、指導や勧告をおこなうことなく命令を受けるケースもあります。
固定資産税の優遇措置を受けられなくなる
通常、土地に建物がある場合、更地と比較して固定資産税を最大6分1まで軽減する優遇措置を受けられます。
ただし、特定空き家に指定されてしまうと優遇措置の適用がなくなり、更地と同様の固定資産税の納付を求められるため注意が必要です。
刑罰を課される場合もある
特定空き家に指定されて勧告を受けた際、対応しないと過料を科されるケースがあります。
たとえば、撤去や修繕の命令に従わない場合、50万円の過料を科されるため注意しておきましょう。
過料に課されても命令に従わない場合、強制撤去されたうえ撤去費用も請求されるため、十分に注意が必要です。
特定空き家に指定されないための対策
特定空き家に指定されると固定資産税の優遇措置を受けられないなど、所有者にとって大きな損失になります。
特定空き家に指定されないための対策を確認しておきましょう。
売却を検討する
近い道のない空き家であれば、売却を検討するのがおすすめです。
空き家であっても毎年固定資産税がかかるほか、維持管理費用も必要になります。
今後使用する見込みがないのであれば、早めに売却を検討しましょう。
定期的に維持管理する
どうしても売却したくない理由があるならば、定期的に維持管理をおこないましょう。
倒壊する恐れのある状態では特定空き家に指定されてしまうため、建物や設備をよい状態に保つ必要があります。
また、景観を維持するために庭木や草木の剪定、害虫予防などを実施するとよいでしょう。
自身で維持管理するのが負担になる場合は、外部の業者に委託することも可能です。
賃貸物件として貸し出す
空き家を修繕・リフォームして、賃貸物件として貸し出すのも対策のひとつです。
また、インバウンド向けの宿泊施設や地域の集会所として活用する方法もあります。
自治体によっては補助金制度を利用できるケースもあるので、チェックしておきましょう。
さらに、自治体が「空き家バンク」を運営している場合もあり、空き家を活用すべく積極的に利用するのがおすすめです。
まとめ
空き家を放置していると周辺住民に迷惑をかけるうえ、固定資産税の優遇措置を受けられなくなったり、過料を科されたりするケースもあります。
空き家を相続した、また予定のある場合には、なるべく早めに対策を講じておきましょう。
空き家で困っていることがあれば、不動産の専門家に相談するのも方法のひとつです。
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